自然農の基本は、虫や草を敵としないという考え方です。
一般的な畑では、虫がいたらすぐに農薬をかけて殺虫したり、草が生えたらとにかく抜いて野菜以外の草がない状態にしたり、手っ取り早く除草剤を撒いて対応したりしています。
今までの野菜栽培は、毎年虫や草と一生懸命お金と労力をかけて戦っているわけです。
これでは、野菜の安心安全とはほど遠い畑の環境になっていきます。
自然農では、畑にいる虫や草とはうまく共存共栄して付き合っていくにはどうすればいいのかというノウハウが詰まっています。
実際に日本では江戸時代以前の野菜栽培は、完全に無農薬・無化学肥料で自然と共存共栄していく持続可能な循環型の栽培方法でした。
日本の近代化とともに農業も様変わりして人間の都合を一方的に押し付ける栽培スタイルに変わっていった歴史があります。
ただそのつけは、畑の土を痩せさせ野菜そのものが本来の健康なエネルギー(栄養)を失いつつあるという要因にもなってきています。
それは、結果的にその野菜を食べる人間の健康も害することにもなっていきます。
また詳しくは、自然農の歴史の章で紹介していきたいと思います。
それでは、本題の自然農の虫との付き合いを見ていきましょう!
自然農の虫との付き合い方とは?
寒冷地での自然農は、暖地での自然農に比べると病害虫の被害は少ない方です。
とはいっても近年の温暖化で寒冷地でも夏場の気温はかなり高くなるようになってきました。
そのような環境の変化にも自然農で毎年コツコツと畑の環境を整えていくとなんとか対応できるようになります。
はじめたばかりの菜園は、もともとの畑、菜園がある環境や土の状態しだいで虫がよってきやすくなります。
それはある意味仕方のないことで本来はそこにはない野菜を人間の都合で植えているだけですから、その野菜達が周りの環境に馴染めるように人間がある程度手を入れてやるしか手がありません。
そのためにも菜園の初期の頃は、菜園に虫がいたらどういった虫が来ているのかよく観察することが重要です。
慌てることなくその虫をよく観察していきましょう。
- 視点1 どの野菜にどんな虫がきているのか?
- 視点2 その虫がなにを目当てによってきているのか?
- 視点3 何を食べに来ているのか?
自然農では虫の声を聴くといいますが、病害虫の出る野菜には何かしらの問題があるという自然界からのお知らせだととらえて、その原因をよく考える姿勢が大事です。
ここで勘違いしてはいけないのが、野菜そのものに原因があるわけではなく、人間側の対応に問題があるという視点を忘れてはいけないと思います。
虫と対話するような感覚で虫と接していくことが重要です。
例えば、アブラムシが多くついてしまったらそのアブラムシがなぜその野菜によってくるのかという視点が大事です。
すぐに殺虫剤を吹きかけてはダメですよ~^^;
アブラムシは、植物が成長のためにだす有機酸(おもにアミノ酸)を吸いにやってきます。
そのアブラムシが出す甘い汁を目指してアリがよくよってきます。
アブラムシとアリは共生関係にあるといっていいでしょう。
アリを多く見かけるようになったらどこかにアブラムシがいるサインだと思ってアブラムシのコロニーを探してみてください。
そしてアブラムシが異常に発生しているという状況は、それだけ野菜の成長が異常に旺盛ということです。
どうしてそのような異常な過剰な成長になっているのか考える必要がありますね。
それは、人間が肥料をやりすぎているせいで野菜が栄養過多で肥満体質になっていると考えられます。
野菜は、どんどん栄養を吸収してブクブクと成長しますがそれは自然界ではありえない状態です。
野菜そのものも不健康になっていき病害虫への耐性もなくなっていきます。
人間でも同じですね。肥満は病気の元です。
その部分を改善していかない限り虫はいくらでもよって来て野菜を食べて尽くしてしまいます。
そうならないために薬剤を用いて虫を殺すという手段をとるというのが現代の農業です。
根本の原因をみずに表面的な対処法で対応するために悪循環の連鎖にはまり込んでいきます。
虫を観察して、根本の原因を探る努力をする必要が自然農の畑では必要です。
また、農薬を使わない自然農の畑では食物連鎖の循環が見られます。
菜園にとっては、益虫といわれる天敵の虫達も多くよってきます。
そういった益虫がくることで害虫の異常発生が抑えられて良いバランスが保たれることになります。
自然農で草マルチをしながらコツコツ土壌を豊かにしていくことと旬の野菜、その土地に合う野菜を育てることで病害虫は、かなり減らすことができます。
まったくのゼロにすることは不可能ですし、それこそ不自然な状態です。
自然界はすべてバランスで成り立っていて、そのバランスがくずれるといろいろ問題が発生します。
ただその問題のとらえ方も全体最適化の一つの解決方法だと考えれば、根本にある原因へのアプローチもおのずと見えてくると思います。
先人の知恵・酢と木酢液(竹炭液)の活用で病害虫を予防!
現在の自然農や有機農法は、先人たちの試行錯誤で病害虫の被害を減らしながらいかに上手く健康に野菜を育てていくかという知恵が受け継がれてきています。
各地に残る農事伝承や農業書にそういった知恵が受け継がれていて、それが現在進行系で現代でも蓄積されつづけています。
その知恵・情報を活用させてもらうことでゼロから病害虫と向き合う必要がないので助かっています。
その一つが穀物醸造酢(おもに米酢や麦酢)や木酢液(竹炭液)の活用方法です。
おそらく江戸時代以前からそれらを上手く活用して持続可能な循環型の野菜栽培を続けてきたのだと思います。
酢や木酢液はむかしから農村には身近にある材料です。
酢は、お酒をさらに微生物で発酵させるとできるものですが、生物の栄養になる有機酸を豊富に持つと同時に強い酸性で抗菌作用もあります。
木酢液は、炭焼の過程でできる副産物ですが虫への忌避効果や抗菌作用や薄めて使うことで微生物の成長を促進させる作用も持っています。
実際の使い方とは?
酢や木酢液は必ず適切な量の水で薄めてから使います。原液のまま使うと強すぎて野菜にも影響がでてしまいます。
どちらの素材も病害虫の予防に効果が高いので、虫や病気が発生する前から使っておくのがポイントです。
苗の植え付け時や種まき前の畝への灌水の時に適量を散布しておくと良いです。
有機農法や自然農の実践者の情報では、様々な濃度の使い方があります。
自分の菜園でいろいろ試してみるのが一番です。
一応目安となる使い方を紹介しておきます。
酢は、状況に応じて30倍~100倍に水で薄めてから使います。
木酢液は、500倍以上に薄めて使うようにしましょう。
とくに野菜がまだ小さい時には病害虫にやられやすいので酢や木酢液で予防しながら元気に育てるのが必要です。
ある程度大きくなれば野菜自身の耐性もついてきて酢や木酢液をかけなくても大丈夫になります。
最近の研究では。植物には虫に食べられないようにするために防御する力があるようです。虫が嫌がるガス(匂い)を放出する機能をもっているそうです。
植物もただ食べられているだけではないということですね。長い進化の過程で獲得したものでしょう。
人間にも外からの病原菌に対する防御機能として免疫があるのと同じですね。
ただこの免疫も健康体でなければ100%の力を発揮できないので健康でいることが大事です。
それはそのまま自分が育てる野菜にも適用できる考え方ですね。
野菜が健康に育つ環境を整えていくことが自然農の本質です。
野菜が健康に育つベースとなるのが土です。
野菜の特性に合わせて土作りをしていくこと。
あるいは、菜園の土に合った野菜を育てることで無理なく野菜が育ちます。
自然農の土作りもかなり奥が深いので別の記事で紹介していきます。
<参考文献>
『自然農薬で防ぐ病気と害虫』古賀綱行著 財)農山漁村文化協会
『寒地の時給菜園12ヶ月』細井千重子著 財)農山漁村文化協会
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