自然農を始めてみたいと思ったとき、多くの人が最初に迷うのが「草をどうしたらいいのか」ということではないでしょうか。
畝の上に草がたくさん生えている。
通路にも草が伸びている。
本や動画では「草を活かす」「草マルチにする」と言われるけれど、実際に畑の前に立つと、
「この草は刈るの?」
「抜いた方がいいの?」
「草ぼうぼうの畝に、どうやって種をまくの?」
そんな疑問が出てくると思います。
自然農では、草はただの邪魔者ではありません。
草は土を乾燥から守り、根で土をほぐし、刈ればそのまま畝に戻って、土を育てる材料にもなります。
ただし、だからといって何もせず放っておけばよい、というわけでもありません。
小さな苗や発芽したばかりの作物は、勢いの強い草に負けてしまうことがあります。
草マルチも、厚く敷きすぎれば蒸れたり、虫が増えたり、発芽の邪魔になることもあります。
大切なのは、草を敵にすることでも、完全に放任することでもなく、作物が育ちやすいように草とのバランスを整えていくことです。
この記事では、自然農を始めたばかりの方に向けて、畝と通路の草整理の考え方、刈った草を草マルチとして活かす方法、そして草のある畝に種をまくときの基本を、できるだけわかりやすく紹介していきます。
自然農では草をどう考えるか

自然農では、草をすべて取り除いて畑をきれいにするのではなく、草も畑の一部として見ていきます。
一般的な畑では、作物以外の草は「雑草」として取り除く対象になりがちです。
けれど自然農では、草は土を守り、土を育てる大切な存在でもあります。
たとえば、草が生えていることで、強い日差しや風から土の表面が守られます。
夏の乾燥した時期には、草や草マルチがあることで土の水分が保たれやすくなります。
また、草の根は土の中に入り込み、枯れた根はやがて土の中のすき間や有機物となって、微生物や小さな生きものたちの働きを助けてくれます。
刈った草も、そのまま畝の上に敷けば草マルチになります。
草マルチは土の乾燥を防ぎ、雨で土がたたかれるのをやわらげ、少しずつ分解されて土に還っていきます。
つまり草は、ただ作物の邪魔をするだけのものではなく、畑の循環を支えてくれる存在でもあるのです。
ただし、ここで気をつけたいのは、自然農は「草を何もしないで放っておく農法」ではないということです。
作物がまだ小さいうちは、まわりの草に光を奪われたり、風通しが悪くなったりして、うまく育たないことがあります。
とくに種をまいた直後や、苗を植えたばかりの時期は、草の勢いに作物が負けやすい時期です。
そのため、自然農では草を敵にするのではなく、作物が育ちやすいように草の勢いを整えていきます。
全部をきれいに刈るのではなく、作物のまわりだけ草を低くする。
種をまく場所だけ草をよけて、土の表面を出す。
通路の草はある程度伸ばしてから刈り、その草を畝の上に戻す。
そんなふうに、草をなくすのではなく、草の力を借りながら、作物が育つ場所を少しだけ整えてあげるイメージです。
畑に草があると、最初は不安に感じるかもしれません。
けれど、よく観察してみると、草があることで土が乾きにくかったり、虫や小さな生きものが集まっていたり、裸の土とは違う豊かさが見えてきます。
自然農における草との付き合い方は、「草を完全に取り除く」ことでも、「何もしない」ことでもありません。
作物の様子を見ながら、必要なところに手を入れ、刈った草をまた畑に戻していく。
その繰り返しの中で、畑の土は少しずつ育っていきます。
畝の草整理の基本

自然農の畝では、草をすべて取り除いて裸の土にする必要はありません。
むしろ、畝の上に草や草マルチがあることで、土の表面が乾きにくくなり、雨で土が流れたり固くなったりするのを防いでくれます。草の根も土の中に残り、やがて土を育てる働きにつながっていきます。
ただし、畝の草をまったく整理しなくてよいわけではありません。
とくに作物がまだ小さいうちは、まわりの草の勢いに負けてしまうことがあります。草に光をさえぎられたり、風通しが悪くなったり、株元が蒸れたりすると、せっかく発芽した作物や植えた苗がうまく育たないこともあります。
畝の草整理で大切なのは、畝全体をきれいにすることではなく、作物が育つ場所を見つけやすく、育ちやすくしてあげることです。
基本は、作物の株元まわりや、種をまく場所を中心に草を整理します。
小さな苗のまわりは、手でやさしく草をよけたり、地際で刈ったりして、苗に光が当たるようにします。苗が草に隠れてしまうようなら、そのまわりだけ少し広めに草を整理します。
このとき、草を根ごと全部抜くよりも、地際で刈ることを基本にします。根を土の中に残すことで、土を大きく動かさずにすみ、草の根がつくった土のすき間も残りやすくなります。刈った草は、そのまま畝の上に戻して草マルチにすることができます。
ただし、すべての草を必ず刈るだけにする必要はありません。
ツル性の草が作物に巻きつきそうなときや、地下茎で広がる強い草が作物のすぐそばにあるとき、また小さな苗を覆ってしまうような草があるときは、必要に応じて根ごと取り除くこともあります。
自然農というと「草は抜いてはいけない」と思われることがありますが、大切なのは決まりを守ることではなく、畑と作物の様子を見ることです。
作物が元気に育っていて、草も低くおさまっているなら、無理に草を整理しすぎる必要はありません。反対に、作物が草に埋もれそうなときは、早めに手を入れて助けてあげます。
目安としては、作物より草の方が高くなりそうなとき、作物の葉に草がかぶさってきたとき、株元が見えなくなってきたときは、草整理のタイミングです。
畝の草整理は、次のような手順で進めるとわかりやすいです。
- まず作物の場所を確認する
草の中に作物が隠れていることもあるので、いきなり刈らずに、まずはどこに作物があるかを確認します。発芽したばかりの小さな芽や、植えたばかりの苗を傷つけないように、最初はゆっくり見ていきます。 - 作物の株元まわりの草を整理する
作物のすぐ近くにある草は、手でよけたり、地際で刈ったりします。小さな苗の場合は、苗のまわりに少し空間をつくり、光と風が届くようにします。 - 作物にかぶさる草を低くする
作物の葉に草がかぶさっている場合は、その草を刈って低くします。畝全体をきれいにするのではなく、作物に光が当たり、風が通るようにすることを意識します。 - 強すぎる草は必要に応じて抜く
ツル性の草、地下茎で広がる草、作物のすぐそばで勢いよく伸びる草などは、必要に応じて根ごと取り除きます。自然農でも、作物が負けそうなときは手を入れてかまいません。 - 刈った草を畝の上に戻す
刈った草は、できるだけ畝の上に戻して草マルチにします。ただし、小さな苗の株元に厚くかけすぎると蒸れたり、苗が埋もれたりするので、株元には少し空間をあけて薄く敷きます。 - 最後に作物の見え方を確認する
草整理が終わったら、作物に光が当たっているか、風が通りそうか、株元が草に埋もれていないかを確認します。作物が見えやすく、畝の土も草や草マルチで守られている状態がひとつの目安です。
畝の草整理は、畑をきれいに見せるための作業ではありません。
作物に光と風を届け、土を守りながら、草の力も畑に活かしていくための作業です。
全部をきれいにしようとせず、作物のまわりから少しずつ整えていくことが、自然農の畝管理の基本になります。
通路の草整理の基本

自然農の畑では、通路の草も大切な役割を持っています。
通路は、ただ人が歩くための場所ではありません。
畝のまわりの環境を整えたり、刈った草を草マルチとして畝に戻したりするための、大切な草の供給場所でもあります。
畝の上では、作物が草に負けないように株元まわりを中心に草を整理します。
一方で通路の草は、作物のすぐ近くでなければ、ある程度伸ばしてから刈ることができます。
草が少し伸びることで、土の表面が直射日光や強い雨から守られます。
また、通路に草があることで、畑全体が乾きにくくなり、虫や小さな生きものたちのすみかにもなります。
そして、伸びた草を刈れば、その草を畝の上に敷いて草マルチとして使うことができます。
通路で育った草が、畝の土を守る材料になるのです。
ただし、通路の草も伸ばしっぱなしにすればよいわけではありません。
草が伸びすぎると、畝の上に倒れ込んで作物を覆ってしまうことがあります。
風通しが悪くなり、湿気がこもりやすくなることもあります。
また、歩きにくくなったり、どこが畝でどこが通路かわかりにくくなったりすることもあります。
そのため、通路の草は「作物の邪魔にならない高さ」に整えることが基本です。
目安としては、通路の草が畝の上に倒れ込みそうになったとき、作物にかぶさりそうになったとき、歩くたびに草を踏み倒してしまうようになったときが、草刈りのタイミングです。
通路の草を刈るときは、地際まで短く刈り込みすぎる必要はありません。
少し高さを残して刈ることで、土の表面が守られ、また草も再生しやすくなります。
刈った草は、できるだけそのまま畝の上に戻します。
畝の肩や作物のまわりに薄く敷いていくと、土の乾燥を防ぎ、雨による泥はねもやわらげてくれます。
このとき大切なのは、刈った草を一か所に厚く積みすぎないことです。
生の草を厚く重ねると、蒸れたり、腐敗したり、ナメクジなどが増えやすくなることがあります。
草マルチは、最初から分厚く敷くよりも、薄く広げて、乾いて沈んできたら少しずつ足していく方が扱いやすいです。
通路の草整理は、畑をきれいに見せるためだけの作業ではありません。
通路で草を育て、伸びたら刈り、刈った草を畝に戻す。
その繰り返しによって、畑の中に小さな循環が生まれていきます。
畝は作物を育てる場所。
通路は人が歩く場所であり、草マルチの材料を育てる場所。
そう考えると、通路の草もただの雑草ではなく、畑を支える大切な資源として見えてきます。
通路の草整理は、次のような手順で進めるとわかりやすいです。
- まず畝と通路の境目を確認する
草が伸びてくると、どこが畝でどこが通路なのかわかりにくくなることがあります。いきなり刈り始めず、まずは畝の肩や作物の位置を確認し、作物を傷つけないようにします。 - 作物に倒れ込みそうな草から刈る
通路の草が畝の上に倒れ込んでいたり、作物にかぶさりそうになっていたりする場合は、そこから優先して刈ります。作物に光と風が届くようにすることを意識します。 - 通路を歩きやすい高さに整える
通路は作業のたびに歩く場所なので、足元が見えないほど草が伸びていると作業しにくくなります。地際まで短く刈りすぎる必要はありませんが、歩きやすく、畝の様子を確認しやすい高さに整えます。 - 草を少し残して刈る
通路の草は、土を乾燥や強い雨から守る役割もあります。そのため、すべてを地面すれすれまで刈り込むのではなく、少し高さを残して刈ると、土の表面を守りながら草を管理しやすくなります。 - 刈った草を畝に戻す
刈った草は、できるだけ畝の上に戻して草マルチとして使います。畝の肩や作物のまわりに薄く広げるように敷くと、土の乾燥を防ぎ、雨による泥はねもやわらげてくれます。 - 作物の株元には寄せすぎない
刈ったばかりの生草を、作物の株元に厚く寄せすぎると、蒸れたり、虫が増えたり、小さな苗が埋もれたりすることがあります。株元には少し空間をあけ、まわりにふんわりと敷くようにします。 - 刈り残しを見て、次回の目安にする
草整理が終わったら、畝に倒れ込む草が残っていないか、通路が歩きやすいか、刈った草が厚く積もりすぎていないかを確認します。どのくらいでまた草が伸びてくるかを見ておくと、次回の草整理のタイミングがつかみやすくなります。
草ぼうぼうの畝に、どうやって種をまくのか
自然農を始めたばかりの方が、畑の前で戸惑いやすいのが種まきです。
畝の上には草が生えている。
草マルチも残っている。
土が見えている場所は少ない。
そんな状態を見ると、
「このまま種をまいていいの?」
「いったん全部草を刈って、土を出した方がいいの?」
「草マルチの上に種を置いても発芽するの?」
と迷ってしまうかもしれません。
自然農の種まきで大切なのは、畝全体をきれいにすることではありません。
種が発芽し、根を下ろせる場所だけを整えることです。
畝全体の草をすべて刈り、裸の土にしてから種をまく必要はありません。
むしろ、畝全体を裸にしてしまうと、土が乾きやすくなったり、強い雨で土がたたかれたり、また草が一斉に生えやすくなったりします。
自然農では、草や草マルチで土を守りながら、種をまく場所だけ小さく整えていきます。
たとえば、大豆やインゲンのように一粒ずつまく種であれば、株間を決めて、その場所だけ草をよけます。
草を地際で刈り、草マルチを少しどけて、土の表面を出します。
そこに指や棒で穴をあけ、種をまき、土をかぶせて軽く押さえます。
このとき大切なのは、種がきちんと土に触れていることです。
草の上や草マルチの上に種を置いただけでは、土から水分をもらいにくく、乾いて発芽しにくくなります。
種は必ず土に触れるようにまきます。
小松菜、水菜、レタス、にんじんなどの小さい種をまく場合は、少し工夫が必要です。
小さい種は、草マルチの下に埋もれたり、厚い草に覆われたりすると発芽しにくくなります。
そのため、筋まきする場所だけ細く草をよけ、土の表面を出してから種をまきます。
土が固い場合は、表面だけ軽くほぐして、種がなじみやすい状態にします。
種をまいた後は、必要に応じて薄く土をかぶせ、手のひらや板などで軽く押さえます。
この「押さえる」作業はとても大切です。
種と土が密着することで、土の水分が種に伝わりやすくなります。
ただし、小さい種をまいた直上に、最初から厚く草マルチをかけるのは避けます。
発芽した芽が草の下で持ち上がれなかったり、光が届かなかったりすることがあるためです。
草マルチは、種をまいた筋のすぐ上には厚くかけず、両側に少しよけておきます。
発芽して芽が見えてきたら、様子を見ながら少しずつ周囲に草マルチを寄せていきます。
自然農の種まきは、畑全体をきれいに整えてから始める作業ではありません。
草の中に、作物が育つための小さな場所をつくる作業です。
草をすべてなくすのではなく、種が土に触れ、光と水分を受け取れる場所をつくる。
そして、まわりの草や草マルチには土を守ってもらう。
そう考えると、草ぼうぼうに見える畝でも、どこに手を入れればよいのかが少しずつ見えてきます。
種をまく場所だけ整える。
種は必ず土に触れさせる。
小さい種の上には、最初から厚い草マルチをかけない。
発芽したら、草に負けないように少しずつ周りを整えていく。
この基本を押さえておくと、草のある畝でも落ち着いて種まきができるようになります。
草マルチのやり方
畝や通路の草を整理したら、刈った草はできるだけ畝の上に戻していきます。
自然農では、刈った草を畑の外へ持ち出すのではなく、畑の中に戻していくことを大切にします。
草は、畑の中で育ち、刈られ、畝の上に敷かれ、やがて少しずつ土に還っていきます。
この刈った草を畝の上に敷くことを、草マルチと呼びます。
草マルチには、いくつかの大切な働きがあります。
まず、土の乾燥を防いでくれます。
土がむき出しになっていると、太陽の光や風で表面がすぐに乾いてしまいます。
けれど草マルチがあると、土の表面が直接日差しや風にさらされにくくなり、水分が保たれやすくなります。
また、雨が降ったときに土が強くたたかれるのをやわらげてくれます。
裸の土に強い雨が当たると、土の表面が固くなったり、泥がはねて作物の葉についたりすることがあります。
草マルチがあることで、雨の衝撃がやわらぎ、畝の表面も守られます。
さらに、草マルチは少しずつ分解され、土の中の微生物や小さな生きものたちの働きによって、土に還っていきます。
すぐに肥料のように効くものではありませんが、長い目で見ると、土を育てる大切な材料になります。
草マルチの基本は、刈った草を畝の上に薄く広げることです。
刈った草を一か所に山のように積むのではなく、畝の表面をやさしく覆うように、ふんわりと広げます。
とくに刈ったばかりの青い草は水分を多く含んでいるため、厚く重ねすぎると蒸れたり、腐敗したりすることがあります。
最初から分厚く敷くよりも、薄く敷いて、乾いて沈んできたら少しずつ足していく方が扱いやすいです。
作物の株元に敷くときは、少し注意が必要です。
小さな苗や発芽したばかりの芽のすぐそばに、生の草を厚く寄せすぎると、蒸れたり、虫が集まりやすくなったり、苗が草に埋もれてしまったりすることがあります。
そのため、株元には少し空間をあけて、作物のまわりに輪を描くように草マルチを敷くと安心です。
作物が大きくなってきたら、様子を見ながら少しずつ草マルチを近づけたり、量を増やしたりしていきます。
また、小さい種をまいた直後の場所にも、厚い草マルチはかけすぎないようにします。
発芽するまでは、種をまいた筋の上をふさがず、両側に草マルチをよけておきます。
芽が出て、ある程度しっかりしてきたら、周囲の土が乾きすぎないように、少しずつ草マルチを寄せていきます。
草マルチに使う草は、できれば種をつける前の草が扱いやすいです。
すでに種をたくさんつけた草を大量に畝に戻すと、畝の上に草の種をまくことになってしまう場合があります。
もちろん、自然農では草が生えること自体が悪いわけではありませんが、初心者のうちは、管理しやすいように種をつける前の若い草を使うとよいでしょう。
硬い草や太い茎の草は、細かく刻むか、畝の肩や通路寄りに置くと扱いやすくなります。
ツル性の草は、作物にからみやすいことがあるので、敷く場所や量に注意します。
草マルチは、一度敷いたら終わりではありません。
時間がたつと、草は乾いてかさが減り、少しずつ土に近づいていきます。
雨が続けば湿り、晴れが続けば乾きます。
作物が大きくなれば、必要な草マルチの量や敷き方も変わっていきます。
そのため、畑を見るたびに、土が乾きすぎていないか、草マルチが厚くなりすぎていないか、作物の株元が蒸れていないかを確認します。
自然農の草マルチは、きれいに敷き詰めるためのものではありません。
土を守り、草を畑に戻し、畑の中に循環をつくるためのものです。
刈った草を、薄く、ふんわりと、作物の様子を見ながら戻していく。
その小さな積み重ねが、少しずつ畑の土を育てていきます。
草マルチで気をつけたいこと
草マルチは、自然農の畑で土を守り、草を畑に戻していくための大切な方法です。
土の乾燥を防ぎ、雨による泥はねをやわらげ、微生物や小さな生きものたちのすみかにもなります。
刈った草を畝に戻していくことで、畑の中に小さな循環をつくることができます。
ただし、草マルチは「たくさん敷けばよい」というものではありません。
敷き方や量、使う草の状態によっては、作物の生育を妨げてしまうこともあります。
自然農を始めたばかりの方は、草マルチのよい面だけでなく、気をつけたい点も知っておくと安心です。
まず注意したいのは、草マルチを厚く敷きすぎないことです。
刈ったばかりの青い草は、水分をたくさん含んでいます。
それを一か所に厚く積み重ねると、内側が蒸れたり、腐敗したような状態になったりすることがあります。
とくに梅雨時期や雨が続く時期は、湿気がこもりやすいので注意が必要です。
草マルチは、畝の上に薄く、ふんわりと広げるのが基本です。
乾いてかさが減ってきたら、少しずつ足していくくらいの感覚で十分です。
次に気をつけたいのは、作物の株元に寄せすぎないことです。
小さな苗や発芽したばかりの芽のすぐそばに、生の草を厚く寄せてしまうと、株元が蒸れたり、虫が集まりやすくなったり、苗が草に埋もれてしまったりすることがあります。
とくに葉物野菜や、まだ茎が細い苗の時期は、株元に少し空間をあけておくと安心です。
草マルチは、作物の根元にぴったり寄せるのではなく、少し離したまわりに敷くようにします。
また、種をまいた直後の場所にも注意が必要です。
小松菜、水菜、レタス、にんじんなどの小さい種は、発芽するために光や水分、土との密着が大切になります。
種をまいた上に厚く草マルチをかけてしまうと、芽が出にくくなったり、出た芽が草の下で埋もれてしまったりすることがあります。
小さい種をまいた筋の上には、最初から厚い草マルチをかけないようにします。
発芽するまでは種まきした場所をふさがず、草マルチは両側に少しよけておきます。
芽が出て、ある程度しっかりしてきたら、様子を見ながら少しずつ周囲に草マルチを寄せていきます。
草の種にも気をつけたいところです。
すでに穂を出して種をつけた草を大量に畝に戻すと、畝の上に草の種をまくことになる場合があります。
もちろん、自然農では草が生えること自体を悪いものとは考えません。
けれど、初心者のうちは草の管理に慣れていないため、種をたくさんつけた草を大量に使うと、次の草整理が大変になることがあります。
できれば、草マルチには種をつける前の若い草や、刈ってすぐ扱いやすい草を使うとよいでしょう。
ツル性の草にも注意します。
ツル草は、刈ったあとでも長く残り、作物にからんだり、畝の上で扱いにくかったりすることがあります。
作物の近くに敷く場合は、短く切るか、畝の肩や通路寄りに置くなど、作物にからまないようにします。
また、地下茎で広がる草や、根が強く再生しやすい草は、そのまま畝に戻すと再び根づくことがあります。
そうした草は、よく乾かしてから使う、畝の上ではなく通路側に置く、量を控えるなど、畑の様子を見ながら扱います。
ナメクジやダンゴムシなどの小さな生きものが増えることもあります。
草マルチの下は、湿り気があり、生きものにとってすみやすい場所になります。
これは土の生態系が豊かになる面もありますが、小さな苗や発芽したばかりの芽が食べられてしまうこともあります。
とくに梅雨時期や、日当たりや風通しが悪い場所では、草マルチを厚くしすぎないようにします。
苗が小さいうちは株元を少し空けて、様子を見ながら草マルチを調整します。
草マルチは、とても便利で大切な方法ですが、畑の状態によって正解は変わります。
乾燥しやすい畑では、草マルチを少し多めにした方が作物が助かることがあります。
一方で、湿気がこもりやすい畑では、薄めに敷いた方がよいこともあります。
春、梅雨、真夏、秋でも、草マルチの量や敷き方は少しずつ変わります。
大切なのは、草マルチを敷いたあとも畑をよく見ることです。
土は乾きすぎていないか。
株元は蒸れていないか。
小さな芽が草に埋もれていないか。
虫に食べられすぎていないか。
草マルチが厚くなりすぎていないか。
そうした様子を見ながら、足したり、よけたり、薄く広げ直したりしていきます。
自然農では、草マルチにも決まった正解があるわけではありません。
草を活かしながら、作物が育ちやすい状態に整えていくこと。
それが草マルチを使うときの基本です。
「薄く、ふんわりと、株元は少し空ける」
まずはこのくらいを目安にして、畑の様子を見ながら少しずつ加減を覚えていくとよいでしょう。
季節ごとの草整理の目安

草の伸び方や、作物が草に負けやすい時期は、季節によって変わります。
自然農では、いつも同じように草を刈ったり、同じ量の草マルチを敷いたりするのではなく、季節ごとの気温、雨、乾燥、作物の大きさを見ながら、草との付き合い方を少しずつ変えていきます。
春は、作物も草も動き出す時期です。
まだ気温が低い時期は草の伸びもゆっくりですが、暖かくなるにつれて、畝や通路の草も少しずつ勢いを増してきます。
春に種をまいたり苗を植えたりする場合は、作物がまだ小さいため、草に負けないように株元まわりを丁寧に整理します。
この時期は、畝全体をきれいにする必要はありませんが、発芽した芽や植えたばかりの苗が草に隠れないようにすることが大切です。
小さな苗のまわりは、手で草をよけたり、地際で刈ったりして、光と風が届くようにします。
春の草マルチは、厚くしすぎない方が扱いやすいです。
まだ地温が上がりきっていない時期に草マルチを厚く敷きすぎると、土が温まりにくくなることがあります。
薄く敷いて、土の様子や作物の育ち方を見ながら少しずつ足していきます。
梅雨から夏前にかけては、一年の中でも草の勢いが強くなる時期です。
雨と気温で草が一気に伸び、数日見ないうちに作物が草に埋もれてしまうこともあります。
この時期は、草を放っておくと作物に光が届きにくくなり、風通しも悪くなります。
とくに小さな苗や、発芽して間もない作物は、早めに草整理をして助けてあげます。
作物の葉に草がかぶさってきたら、草整理のタイミングです。
通路の草も、畝に倒れ込みそうになる前に刈って、刈った草を畝に戻します。
ただし、梅雨時期は湿気が多いため、生の草マルチを厚く敷きすぎないようにします。
株元に寄せすぎると蒸れたり、ナメクジなどが増えやすくなったりすることがあります。
この時期は、草マルチを薄く広げ、風通しを意識しながら管理すると安心です。
真夏は、乾燥と強い日差しから土を守ることが大切になります。
晴れの日が続くと、裸の土はすぐに乾き、表面が固くなりやすくなります。
この時期の草や草マルチは、土の水分を保つためにとても大切な働きをしてくれます。
真夏は、畝の上を裸にしすぎないようにします。
作物のまわりに草マルチを敷き、土の表面を日差しから守ります。
通路の草も、地際まで短く刈りすぎるより、少し高さを残して刈る方が、土の乾燥を防ぎやすくなります。
一方で、作物の株元が蒸れていないか、虫が増えすぎていないかは確認します。
特に雨のあとに暑くなるような時期は、草マルチの下が蒸れやすくなることがあります。
乾燥を防ぎたいからといって、一度に厚く敷きすぎず、作物の様子を見ながら調整します。
秋になると、夏ほど草の勢いは強くなくなってきます。
気温が下がり、日差しもやわらかくなるため、草整理の頻度も少し落ち着いてきます。
この時期は、無理に畝をきれいにしすぎず、草や草マルチで土を守りながら、次の季節に向けて畑を整えていきます。
秋冬野菜を育てる場合は、苗が小さいうちは春と同じように株元まわりを丁寧に整理します。
ただし、真夏ほど草の勢いは強くないため、作物が草に埋もれない程度に整えれば十分なこともあります。
収穫が終わった畝では、作物の残渣や刈った草をそのまま畝に戻しておくと、土を裸にせずにすみます。
冬に向けて畝の表面を草や枯れ草で覆っておくことで、寒さや乾燥、強い雨風から土を守ることができます。
冬は、草の動きがゆっくりになる時期です。
寒さで草の勢いは弱まり、畑の作業も少なくなります。
この時期は、必要以上に畝をきれいに片づけすぎず、枯れ草や草マルチ、作物の残渣を使って土を覆っておくことが大切です。
土を裸のまま冬越しさせると、乾燥した風や雨、霜の影響を受けやすくなります。
草や枯れ草で畝を覆っておくことで、土の表面が守られ、春に向けて少しずつ土の環境が整っていきます。
季節ごとの草整理に、ひとつの決まった正解はありません。
春は小さな苗を草から守る。
梅雨から夏前は、草の勢いに作物が負けないように早めに整える。
真夏は、草や草マルチで土を乾燥から守る。
秋冬は、土を裸にしすぎず、次の季節に向けて畝を休ませる。
そんなふうに、季節ごとの草の伸び方と作物の状態を見ながら、少しずつ手の入れ方を変えていきます。
自然農の草整理は、カレンダー通りに決める作業ではありません。
畑に立ち、草の伸び方を見て、作物の元気さを見て、土の湿り具合を見ながら、その時々で加減していく作業です。
最初は迷うことも多いと思います。
けれど、季節ごとに畑を観察していると、草を刈るタイミング、残す量、草マルチを足す加減が、少しずつ見えてくるようになります。
まとめ|草を敵にせず、作物が育つ場所を整える
自然農の草整理は、草をすべてなくす作業ではありません。
畝の草を全部きれいに取り除き、通路も地際まで刈り込み、土を裸にしてしまうのではなく、草の力を借りながら、作物が育ちやすい場所を整えていく作業です。
草は、土を乾燥から守ってくれます。
草の根は、土の中にすき間をつくってくれます。
刈った草は、草マルチとして畝に戻すことができます。
そして、草や草マルチの下では、微生物や小さな生きものたちが少しずつ土を育ててくれます。
けれど、草を大切にすることと、草をそのまま放っておくことは同じではありません。
小さな苗や発芽したばかりの作物は、勢いの強い草に負けてしまうことがあります。
草が作物にかぶさると、光が届きにくくなり、風通しも悪くなります。
草マルチも、厚く敷きすぎたり、株元に寄せすぎたりすると、蒸れや虫の原因になることがあります。
だからこそ、自然農では観察が大切になります。
作物は草に埋もれていないか。
株元に光と風は届いているか。
土は乾きすぎていないか。
草マルチは厚くなりすぎていないか。
種をまいた場所は、ちゃんと土に触れて発芽できる状態になっているか。
そうやって畑を見ながら、必要なところに少しずつ手を入れていきます。
畝では、作物の株元や種をまく場所を中心に草を整理します。
通路では、草をある程度育て、伸びたら刈り、その草を畝に戻します。
草ぼうぼうの畝に種をまくときは、畝全体を裸にするのではなく、種をまく場所だけ草や草マルチをよけて、種が土に触れる場所をつくります。
草マルチは、薄く、ふんわりと、株元を少し空けて敷いていきます。
最初から完璧にできなくても大丈夫です。
自然農の草整理には、畑ごと、季節ごと、作物ごとに違いがあります。
乾きやすい畑もあれば、湿気がこもりやすい畑もあります。
草の勢いが強い年もあれば、雨が少なく草マルチに助けられる年もあります。
大切なのは、「草は全部取るもの」と決めつけないこと。
そして反対に、「自然農だから何もしなくていい」と思い込まないことです。
草を敵にせず、でも放任しすぎず、作物が育ちやすいように整えていく。
その感覚は、畑に立ち、草を刈り、作物を見て、土に触れる中で少しずつ身についていきます。
刈った草を畝に戻す。
小さな苗のまわりに光を入れる。
乾きそうな土を草マルチで守る。
種が発芽できる小さな場所をつくる。
そんな一つひとつの作業が、自然農の畑を少しずつ育てていきます。
草のある畑は、最初は少し不安に見えるかもしれません。
けれど、草の中に作物が育ち、刈った草が土に還り、土の中の生きものたちが働いている様子が見えてくると、草はただの邪魔者ではなく、畑を支える仲間のように感じられてきます。
自然農の草整理は、きれいに片づけるための作業ではありません。
草と作物と土の間に、ちょうどよい関係をつくっていく作業です。
まずは、畝全体をきれいにしようとしなくて大丈夫です。
作物のまわりから、種をまく場所から、通路の草から、できるところを少しずつ整えてみてください。
草をなくすのではなく、草の力を借りながら、作物が育つ場所を整える。
そこから、自然農の畑づくりは始まっていきます。

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