自然農を始めるとき、多くの人が最初に迷うのが「畝をどう作ればいいのか」ということではないでしょうか。
畝の幅はどれくらいにすればいいのか。
高さは何cm必要なのか。
南北に作るのか、それとも東西なのか。
草がたくさん生えている場所でも、そのまま畝を作っていいのか。
畝立てには、すべての畑に当てはまる一つの正解があるわけではありません。
特に自然農では、決まった寸法通りに畝を作ることよりも、まずその場所の状態を観察し、それに合わせて畝の形を考えていくことが大切だと感じています。
そして、もう一つ大事なのが、
自然農の畝は、一度作って終わりではない
ということです。
一度作った畝を毎年壊して作り直すのではなく、草や野菜の根、枯れた植物などをその場に残しながら、何年もかけて畝そのものを育てていきます。
この記事では、これから自然農を始める方にもわかりやすいように、畝を作る前の観察から、畝幅・高さ・向きの考え方、実際の畝立て方法まで、私自身が自然農を実践してきた経験を交えながら紹介します。
自然農では、なぜ畝を作るのか
畑というと、土を耕してから畝を作り、そこへ野菜を植える姿を思い浮かべる方も多いと思います。
自然農でも畝を作ることはありますが、その目的は単に「野菜を植えるために土を盛る」だけではありません。
畝を作る大きな理由の一つは、
野菜を育てる場所と、人が歩く場所を分けること
です。
畝を作り、その周囲に通路を設けることで、基本的には畝の中へ人が入らなくなります。
人が頻繁に踏まなければ、土は強く締め固められにくくなります。
また、野菜の根や草の根、土の中の生きものの働きによって、畝の中には少しずつ隙間や構造が作られていきます。
つまり自然農の畝は、
野菜を育てる場所であると同時に、土の生態系を長期的に育てていく場所
と考えるとわかりやすいでしょう。
畝を作る前に、まず土地を観察する
いきなりスコップを持って畝を作り始める前に、まずその土地をよく観察します。
自然農では、この「観察」がとても重要です。
見ておきたいポイントは主に次のようなものです。
- 日当たり
- 草の生え方
- 土の硬さ
- 水はけ
- 地面の傾斜
- 雨が降った後の水の流れ
- 周囲の樹木や建物
- 作業するときの動線
同じ畑の中でも、場所によって条件がかなり違うことがあります。
例えば、少し低くなっている場所だけ雨の後に水が残ったり、大きな木の近くだけ土が乾きやすかったりします。
できれば雨が降った翌日などにも畑を観察してみると、その土地の特徴がよくわかります。
草の生え方も重要な観察材料
草が生えている場所では、どんな草が、どれくらい生えているかを観察します。
旧来の記事では、
「草がよく生えている場所は野菜もよく育つ」
と単純に考えていました。
しかし、自然農を長く続けていくと、それほど単純ではないこともわかってきました。
草が少ない原因には、
土壌の養分だけではなく、
- 地面が強く踏み固められている
- 造成したばかりの土地
- 極端に乾燥している
- 水が停滞している
- 表土が流されている
- 過去の土地利用の影響
など、さまざまな可能性があります。
そのため、
「草がない=土が痩せている」とすぐに判断しない
ことが大切です。
反対に、草が旺盛に生えている場所でも、地下では水が停滞している場合があります。
草は土の状態を知る重要な手掛かりですが、一つの情報だけで判断せず、土や水の状態と合わせて見ていきます。
土の硬さと水はけを確認する
次に、実際に土を触ってみます。
剣先スコップなどを地面へ差し込み、
どれくらいの力で入るのか。
土の色はどうか。
湿っているのか、乾いているのか。
根がどのくらい入っているのか。
などを確認します。
土を手で握ってみる方法も一つの目安になります。
適度な水分を含んだ土を握ったとき、ある程度まとまりながら、指で触ると崩れるようであれば、比較的扱いやすい土です。
反対に、強く固まってベタベタする場合は粘土分が多い可能性があります。
ただし、土を握る方法だけで水はけを完全に判断することはできません。
一番わかりやすいのは、
雨が降った後に水がどのくらい残るかを見ること
です。
半日から一日たっても水が残っているような場所では、排水について少し考えた方がよいでしょう。
自然農の畝の高さは何cmがいい?
自然農を始める方からよく聞かれるのが、
「畝の高さは何cmにすればいいですか?」
という質問です。
結論から言うと、
畝の高さは、その土地の水はけによって変えます。
自然農だから必ず15cm、20cm、30cmという決まりはありません。
おおまかな目安としては、
水はけの良い土地であれば、5~15cm程度でも十分な場合があります。
一般的な畑なら、10~20cm程度。
雨の後に水が残りやすい場所では20~30cm程度。
さらに排水の悪い場所では、30cm以上の高畝を検討することもあります。
ただし、
高い畝ほど良いわけではありません。
畝を高くすると排水は良くなりますが、その分、乾燥もしやすくなります。
特に近年のように夏の高温や少雨が続く年では、高畝が逆に乾燥を助長する可能性もあります。
そのため、
「できるだけ高い畝を作る」のではなく、
必要な分だけ高さを確保する
という考え方がおすすめです。
畝幅は1m前後が作業しやすい
畝の幅は、
約1m~1.2m程度
が一つの目安です。
このくらいの幅なら、畝の両側から手を伸ばして中央付近まで作業できます。
自然農では、できるだけ畝の中へ入らないことが大切なので、
「通路から手が届く幅」
という考え方で決めるとよいでしょう。
腕の長さや体格によっても変わるので、無理に1.2mにする必要はありません。
70~90cm程度の細めの畝でも問題ありません。
通路幅は40~50cm程度
通路は40~50cm程度あると歩きやすくなります。
ただし、小さな家庭菜園なら30cm程度でも十分な場合があります。
重要なのは、
作業するときに無理なく歩けること
です。
一輪車を使う場所や、大きな収穫コンテナを運ぶ場所では、少し広めの通路を取っておくと後々楽になります。
自然農では一度畝と通路を決めると長期間その形を使うことが多いため、最初の段階で作業動線まで考えておくことをおすすめします。
畝の向きは南北?東西?
畝の向きについても、
「必ず南北にする」
と決める必要はないと考えています。
一般的には南北方向の畝にすると、東側と西側から比較的均等に日光が当たりやすくなります。
そのため、平坦な場所では南北畝を一つの基本として考えてもよいでしょう。
ただし実際の畑では、
- 地形
- 傾斜
- 水の流れ
- 道路
- 周囲の樹木
- 建物
- 作業動線
などの条件があります。
特に傾斜地では、排水や土の流亡なども考える必要があります。
そのため、
方角だけで決めず、その土地全体を見て畝の向きを決める
ことが大切です。
実践|自然農の畝の作り方

ここから実際の畝立て方法を紹介します。
今回想定しているのは、庭の一角や休耕地など、これから自然農を始める場所です。
1.畝を作る場所の草を刈る
まず、畝を作る範囲の草を刈ります。
このとき、できれば草を細かく刻みすぎず、そのまま残しておきます。
刈った草は捨てません。
後で畝の表面へ戻すため、畝や通路の外側へ一時的に置いておきます。
自然農では草も大切な資源です。
2.畝と通路の位置を決める
次に、畝の位置を決めます。
畝幅は1m前後。
通路幅は40~50cm程度を一つの目安にします。
長い畝を作る場合は、支柱と紐を使うとまっすぐ作りやすくなります。
ただし、家庭菜園であれば多少曲がっていても問題ありません。
見た目を整えることよりも、実際に作業しやすい畝を作ることの方が重要です。
3.畝と通路の境目に切り込みを入れる
剣先スコップを使い、畝と通路の境目に切り込みを入れていきます。
深さは15~20cm程度を目安にします。
スコップの刃を半分程度差し込むイメージです。
畝の周囲をぐるりと切っていくことで、畝と通路の境界がはっきりします。
4.通路の土を畝へ上げる
続いて、通路になる部分の土を掘り、その土を畝へ上げます。
この作業によって、
通路が低くなり、
畝が高くなります。
自然農の畝立てでは、外部から大量の土を持ち込まなくても、基本的には通路の土を利用して畝を作ることができます。
どのくらい土を上げるかは、必要な畝高に合わせて調整します。
5.大きな土の塊を軽く崩す
通路から上げた土には、大きな塊が含まれていることがあります。
スコップや鍬を使って、大きな塊だけ軽く崩しておきます。
このとき、
畝全体を細かく砕いて、フカフカにする必要はありません。
自然農では、必要以上に土を攪乱しないことも大切です。
最初の畝立てだけはある程度土を動かしますが、その後はできるだけ土を動かさずに管理していきます。
ただし、これも基本原則で土が固い状態でスコップも入りずらい場合は、機械の力を借りて土をはじめにほぐしてから畝たてをすることもあります。
また面積が広く人力だけでは、大変な場合も機械(耕運機など)を使用することはありです。
自分の体力、土の状態などをよく観察して臨機応変に対応することが大切です。
6.畝の表面を平らに整える
最後に畝の表面を軽くならします。
特に種を直接まく場合は、凸凹が大きすぎると種まきがしにくくなります。
ただし、完全に水平にする必要はありません。
鍬やレーキなどを使って、大まかに整える程度で十分です。
7.刈った草を畝へ戻す
畝が完成したら、最初に刈っておいた草を畝の表面へ戻します。
草はできるだけ均等に広げます。
ただし、これから種をまく部分は草を一度よけ、土を露出させて播種します。
苗を植える場合も、植える場所だけ草をよけます。
草を敷くことで、
- 土の乾燥を抑える
- 強い雨から表土を守る
- 地表の温度変化を和らげる
- 土の生きものの環境を守る
といった効果が期待できます。
そして草は時間とともに分解され、再び土の循環へ戻っていきます。
草がほとんど生えていない硬い土地ではどうする?
庭や造成地、長期間人が歩いていた場所などでは、地面が非常に硬く、ほとんど草が生えていないことがあります。
以前はこのような場所では、
落ち葉や腐葉土、籾殻くん炭などを大量に入れて土壌改良する方法を紹介していました。
現在は、必ずしも最初から大量の資材を投入する必要はないと考えています。
まず、
なぜ草が生えていないのか
を観察することが先です。
単純な踏圧であれば、畝を立て、人が入らないようにするだけでも時間とともに変化していく場合があります。
硬盤がある場合には、最初だけスコップやフォークで部分的に穴を開け、空気や水の通り道を作ることもあります。
また、その土地で刈れた草や落ち葉などがあれば、地表へ戻します。
最初から完璧な土を作ろうとするより、
植物が育てる環境を作り、その変化を待つ
ことも自然農では大切だと思っています。
最初の1年目は育たないこともある
自然農を始めると、
「自然農ならすぐに元気な野菜が育つ」
と思ってしまうことがあります。
しかし実際には、最初の1年目からすべての野菜がうまく育つとは限りません。
これまで慣行栽培されてきた畑。
長期間放置された休耕地。
造成された庭。
強く踏み固められた土地。
それぞれスタート地点が違います。
自然農では、その土地が持っている状態からスタートすることになります。
だからこそ、
1年目の収量だけを見るのではなく、
畑がどう変化していくかを見る
ことが重要です。
自然農では、一度作った畝を毎年作り直さない

自然農の畝立てで、私が特に大切だと思っているのがこの部分です。
基本的には、
一度作った畝を毎年壊して作り直しません。
翌年も、その翌年も、同じ畝を使います。
野菜を収穫した後も、できるだけ根は土の中へ残します。
地上部や周囲の草も、可能な範囲で畝へ戻します。
すると、
野菜の根。
草の根。
枯れた植物。
微生物。
ミミズ。
さまざまな土壌生物。
こうしたものが少しずつ畝の中で循環していきます。
人間が毎年土を作り直すのではなく、
植物と生きものが畝を作っていく
という感覚に近いかもしれません。
草は「邪魔なもの」から「畝を育てる資源」へ
自然農を始めたばかりの頃は、草を見ると、
「取らなければ」
と思ってしまいます。
しかし、長く畑を見ていると、草に対する見方が少しずつ変わってきます。
もちろん、野菜が草に完全に埋もれてしまえば、生育に影響することがあります。
その場合は草を刈ります。
ただし、抜いて畑の外へ捨てるのではなく、基本的にはその場へ戻します。
通路で刈った草を畝へ置くこともあります。
こうして、
畑で育ったものを、できるだけ畑の中で循環させる
という考え方を大切にしています。
自然農での草整理については、別の記事でも詳しく紹介していますので、畝を作った後の管理と合わせて読んでもらえると、よりイメージしやすいと思います。
自然農の畝は「完成品」ではない
自然農を続けてきて感じるのは、
畝立てをした瞬間が畝の完成ではない
ということです。
畝を作ったばかりの頃は、まだ人間がスコップで積み上げただけの土です。
そこへ野菜を育て、
草が生え、
草を刈り、
根が枯れ、
また新しい根が伸びる。
雨が降り、
虫が入り、
微生物が働く。
こうしたことを何年も繰り返して、少しずつその畝独自の環境ができてきます。
1年目より2年目。
2年目より3年目。
必ず一直線によくなるわけではありませんが、毎年畝を壊してしまうよりも、その場所に積み重なるものは確実に増えていきます。
だから自然農では、
畝を作ることより、畝を育て続けることの方が大切
なのかもしれません。
自然農の畝立てでよくある失敗
最後に、これから畝を作る方が陥りやすいポイントをまとめておきます。
畝を高くしすぎる
排水を良くしようとして必要以上に高くすると、夏に乾燥しやすくなります。
畑の水はけを見て高さを決めましょう。
畝を広くしすぎる
畝の中央へ手が届かなくなり、結局畝の中へ入ることになります。
無理なく両側から作業できる幅がおすすめです。
通路を狭くしすぎる
最初は場所を節約できますが、野菜が大きくなると通れなくなることがあります。
収穫や草整理まで考えて幅を決めます。
最初から完璧な土を作ろうとする
大量の資材を入れれば短期間で土が変化することもあります。
しかし、自然農では必ずしもそれだけが方法ではありません。
まずは今ある土地の状態を知り、その場所に必要な手助けだけを考えてみましょう。
畝を毎年壊して作り直す
せっかく根や生きものが作った土の構造を、毎年リセットすることになります。
水はけなどに大きな問題がなければ、同じ畝を継続して不耕起で使っていきます。
まとめ|畝を作るのではなく、畝を育てていく
自然農の畝立てで最も大切なのは、
何cmの畝を作るか、
どの方角へ向けるか、
という数字だけではありません。
まず土地を観察すること。
水の流れを見ること。
草を見ること。
土を触ること。
そして、その土地に必要な形の畝を作ることです。
畝幅は1m前後。
通路幅は40~50cm程度。
畝高は土地の排水性によって調整する。
こうした数字は、あくまでスタート地点の目安です。
一度畝を作ったら、毎年耕して作り直すのではなく、野菜と草を育てながら同じ畝を使い続けます。
草が生え、
根が伸び、
枯れ、
微生物や虫が働く。
その積み重ねによって畝は少しずつ変化していきます。
自然農の畝立ては、
「野菜を植える場所を作る作業」ではなく、「これから何年も続いていく畑の土台を作る作業」
と考えるとよいのではないでしょうか。
最初から完璧な畝を作る必要はありません。
その土地をよく観察しながら、野菜と草と一緒に少しずつ畝を育てていきましょう。

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